LECTURE

特集講義

CoQ10の正しい選び方・使い方

1) CoQ10の配合量が少ない

 巷にはCoQ10サプリメントが氾濫しています。確かにリピーターも多いのですが、効果を実感できずに摂取を中止した方も数多くいらっしゃいます。それは何故でしょうか?

第一に考えられるのは大半の製品が粗悪品であるということです。コエンザイム協会は日常でも一日100mg摂取を推奨しています。これはCoQ10が多く含有される代表的食品である鰯20匹に相当します。また、病気・体調不良の時には300mg摂取すべきとも述べています。ところが市販されている製品の多くが100mgに全く満たない1日摂取量で設定されています。これでは期待するほどの効果が得られないのも頷けます。

2) CoQ10の吸収率は非常に低い

図1図1
 CoQ10は脂溶性です。脂溶性というのは脂に溶けやすいということですが裏を返せば水には絶対に溶けないという事です。そのためCoQ10の経腸吸収率は5%程度とされています。(図1)

100mg摂取しても5mgしか吸収されないのです。数年前国内CoQ10製造メーカーの一つである(CoQ10は最近まで国内4社で世界中のCoQ10を製造)N社が水溶性CoQ10を発売し吸収率を5倍にしたことで脚光を浴びました。残念ながら水溶性CoQ10は安定性に欠け摂氏40度程度の保存状態だと2週間で90%程度が分解されてしまう事が実験的に検証されています。(図①)とても安全性が高いとは思えませんね。また最近化粧品にCoQ10を配合したものが多く販売されていますが経腸吸収率5%であるCoQ10の経皮吸収率は?という疑問が生じませんか?1%以下の吸収率とされています。果たしてどの程度の効果が期待できるのか、疑問の残るところですよね。

3)包接化が吸収率を飛躍的に向上

図2図2

 吸収率の低い成分の吸収率を高める工夫は各社で行われています。これは医薬品部門でも同じですが、最近包接化が注目を集めています。これはシクロデキストリンと呼ばれる糖質で周囲を取り囲むことにより吸収率を飛躍的に向上させる画期的技術です。最近流行のナノテクノロジーを駆使しCoQ10包接体1粒子はナノ単位の大きさです。



図3図3赤血球の大きさが直径約7.3ミクロンですからその大きさが非常に小さいことが認識されます。シクロ・ケム社の開発したこの技術は多くの有効成分の吸収率と安定性を向上させることに多大な貢献をしました。このナノ粒子技術は半導体・医薬品・化粧品分野へ大きな影響を与えています。包接体CoQ10の吸収率は実に18倍なのです。

4)包接体CoQ10のデータ

図4図4 当初包接体C0Q10の吸収率向上を立証する研究は熊本大学を中心とする研究グループが行ったのですが、ビーグル犬を使用したものだったため、人体においてはその真偽を疑問視するメーカーや一部の学者もありました。(図④)





図5図52005年に発表された被検者24人によるクロスオーバー試験の結果、人体でもCoQ10原末に比してAUC(血中濃度時間曲線面積)が18倍であることが検証されました。(図⑤)ラベルに包接体、包接化或いはシクロカプセル化CoQ10ナノサプリ等の記載があれば一定量以上のCoQ10が含有されていますので安心です。

包接体CoQ10に非ずはCoQ10に有らず。と言っても過言ではありません。

5)理想的CoQ10摂取法

図6図6①抗酸化力を期待するなら

総論でも紹介しましたがレスター・パッカー博士の唱えた5大抗酸化物質を摂取することです。アンチ・エージング目的は言うまでも無く運動能力増進目的(運動は激しくなればなるほど人体を酸化させる)健康増進維持目的であっても結構です。もちろん運動能力増進の為にはBCAA+アルギニンの併用は必須ですしアンチ・エージングの場合は目的とする臓器によってはヒアルロン酸やコラーゲン・グルコサミン等の成分を併用する事も大切です。

抗酸化物質として多くのものが推奨されていますが、学会が認めた由緒正しき5種こそ真の抗酸化物質と呼ぶにふさわしいのです。この中では唯一グルタチオンだけが医薬品扱いの為配合を表示できませんが、ある種の酵母の中に含まれていることから5つの成分を全て含有したサプリメントも販売されています。巷ではビタミンEの数百倍の抗酸化力との過大宣伝がありますが、試験管の中ではどうであれ人体の中ではビタミンEが最強と考えても良いでしょう。ただビタミンEは総論でも述べたように単独では一回の仕事で酸化型になってしまいその機能を終えてしまいます。ビタミンCやCoQ10が復活させることにより再度活躍の場を持つことになります。最近話題のαリポ酸は単独でも素晴らしい抗酸化物質ですがCoQ10をはじめ他の4種類の抗酸化物質を還元する力があります。つまりスーパー・レスキューの役割を担っているのです。残念ながらCoQ10同様20歳をピークに体内産生は減少して行きます。ちなみに推奨1日摂取量は100mgとされ比較的多く含まれる食品であるほうれん草やレバーでも600kg摂取する必要があります。サプリメントとして摂取した方が無難ですね。活性酸素の除去はあくまで五つの成分の共同作業です。従って5種類の抗酸化物質がバランス良く配合されたものがより効率的である事がお分かり頂けると思います。また眼のような特殊な器官では上述の抗酸化物質よりもルテイン・ゼアキサンチン等の成分の方がより有効な場合もあります。また包接化されていないCoQ10とビタミンEを配合すると作用が失脚してしまうデータがありますのでご注意下さい。包接体CoQ10ならビタミンEでもCでもαリポ酸でもOKです。

図7図7②ダイエットに必須の成分は

あるある大辞典で取り上げられたものが全てデータ捏造のでっち上げのような印象を持っている方が多いようですが、実は小生も図⑦に示したL-カルニチン・CoQ10・αリポ酸が最強の組み合わせだといつもお話しています。

L-カルニチンは狂牛病騒ぎで一時立ち消えした感がありましたが、植物由来のカルニチンが開発され注目されています。化学合成で作られたD-カルニチンは作用が全く異なるとされています。体内ではリジンとメチオニンから合成される遊離アミノ酸の一種で、脂肪燃焼には必須の成分とされます。それは長鎖脂肪酸のミトコンドリアへの搬入・排出に関係しているからです。エネルギー産生工場であるミトコンドリアに脂肪酸は単独では入ることができず必ずカルニチンを必要とします。脂肪を燃やす舞台に上がれないのですからカルニチンを必要としない脂肪燃焼はありえないのです。カルニチンは骨格筋に大半が存在します。牛肉よりラム肉に多い事は有名ですが、必要推奨量とされる1日300~500mgを摂取する為にはラム肉でも500g摂取する必要があり、その分多くカロリーを摂取することになりますね。一方ダイエット用メニューは植物性食品が中心ですから、カルニチンが圧倒的に不足します。カロリー摂取制限による栄養失調状態を作っているだけで脂肪燃焼は何もしていないことを理解してください。αリポ酸はチオクト酸とも呼ばれる脂肪酸の一種で糖代謝には必須の酵素です。ピルビン酸からアセチルCoAに変換する際に必須の成分です。いずれにしろ糖質も脂質もミトコンドリアで最終的にエネルギーに変換されるわけですから最後の総仕上げにCoQ10が貢献します。図⑧にシェーマにしましたのでご参考までに。

図8図8許される範囲でCoQ10とその周囲にある有用なサプリメント素材の説明をしましたが、理解していただけたでしょうか?疑問があればまたご質問下さい。

今回の掲載に関しては大変無理をお願いして、株式会社シクロケム様に貴重な資料をお借りしました。ご協力を大変感謝いたします。